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同じ「波」だけど違う「騒音」と「振動」

第一事業部 技術グループ
深津 遼貴(フカツ ハルキ)

日常生活において、「騒音」や「振動」を感じることは少なくありません。これらが小さい場合は問題になりませんが、大きくなるとストレスに感じたり、健康被害を引き起こしたりするなど、人の心身に影響を及ぼすことがあります。時には公害問題へと発展し、広範囲にわたり、深刻な影響を与えることがあります。
今回は、人が感じる騒音と振動について、それぞれの違いにフォーカスして、簡単に説明いたします。

  

「騒音」と「振動」とは

騒音と振動はどちらも波(波動)ですが、異なる性質を持ちます。

騒音

  • 主に空気中を振動として伝わる波
  • 人が感じる(聞くことができる)音の範囲は約20~20,000 Hz(ヘルツ)
  • 主な騒音:生活騒音、交通騒音、工事音など不快・望ましくない音

振動

  • 主に地盤や建築物などの固体を伝わる波
  • 人が体で感じやすい(揺れと認識する)振動の範囲は約1~100 Hz(ヘルツ)
  • 主な振動:自然現象による振動(風、地震)、交通振動、機械振動、工事振動、歩行振動など不快・望ましくない振動

騒音・振動の感覚評価

実際に騒音や振動を感じた際にはどのような評価をすれば良いでしょうか。
ここでは騒音や振動を人が感じた際の評価方法について解説します。

  

騒音レベル

騒音の評価には、騒音レベルを用います。
騒音レベルとは、空気中の音による圧力(音圧)を対数表示した音圧レベルに対し、人間の耳の感度を考慮した「A特性」(図1)という重み付けを行ったものです。音圧レベルは式(1)によって計算します。

  

   

図1.音の周波数重み付け特性(平坦特性は音圧レベルの特性を指す)

表1に騒音レベルの目安を示します。一般的な集合住宅の居室では45dB以下の騒音レベルが目安とされています。

表1.騒音レベルの目安

騒音レベル(dB)想定場所
80~90パチンコ店内、ゲームセンター店内
70~80航空機内、鉄道車内、主要幹線道路周辺、セミの声
60~70新幹線車内、バス車内、コーヒーショップ店内、ファミリーレストラン店内
50~60銀行窓口周辺、博物館内、役所窓口周辺、書店内
40~50高層住宅地域(昼間)、静かな事務所、霊園(昼間)、美術館内、戸建住宅地(昼間)、図書館内
30~40高層住宅地域(夜間)、戸建住宅地(夜間)、ホテル客室
(騒音レベル、都心・近郊部用)

  

振動レベル

振動の評価には、振動レベルを用います。
振動レベルは、振動の加速度を対数表示した振動加速度レベルに対し、人間の振動感覚を考慮した周波数補正(図2)を行ったものです。また、振動感覚補正は鉛直方向と水平方向でそれぞれ異なります。
騒音と同じく単位はデシベル(dB)で表しますが、音が圧力(Pa)を対数表示したものに対し、振動は加速度(m/s2)を対数表示したもので全く測っているものは異なります。
振動加速度レベルは式(2)によって計算します。

  

  

図2.振動の周波数重み付け特性

表2に振動レベルの目安を示します。

表2.振動レベルの目安

振動レベル(dB)人の感覚
110~自分の意志では行動できない
105~110立っていることが困難になる
95~105非常な恐怖感を感じ、多くの人は身の安全を図ろうとする
85~95かなり恐怖感を感じ、一部の人は身の安全を図ろうとする
75~85屋内にいる人のほとんどが、揺れを感じる
65~75屋内にいる人の多くが、揺れを感じる
55~65屋内にいる人の一部が、わずかな揺れを感じる
~55人は揺れを感じにくい

  

騒音・振動の測り方

実際に音や振動の大きさを測る方法とその違いを説明します。

騒音レベルの測り方

  • 測定機器:騒音計
  • 測定位置:人の耳の高さ(地上1.2~1.5m)、壁などから1m以上離す
  • 測定単位:騒音レベル デシベル(dB)
  • 測定規格:JIS Z 8731:1999 環境騒音の表示・測定方法に基づく
  • 時定数:Fast(125ms), Slow(1s)

図3.測定機器(騒音計)

振動レベルの測り方

  • 測定機器: 振動レベル計
  • 測定位置:地面や床面に直接設置
  • 測定単位:振動レベル デシベル(dB)
  • 測定規格: JIS Z 8735:1981 振動レベル測定方法に基づく
  • 時定数:630ms

図4.測定機器(振動レベル計 右:センサー)

参考文献

新・公害防止の技術と法規 2025 騒音・振動編 公害防止の技術と法規編集委員会 編
気象庁震度階級関連解説表