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「横揺れ」と「縦揺れ」の違い-まるわかりガイド

私たちが建物内で感じる振動は、大きく2つの方向の揺れ方に分けられます。横揺れか、縦揺れかです。それぞれ専門的な言葉では、水平振動と鉛直振動と呼ばれています。揺れの発生の仕組みや、人がどう感じるかは揺れる方向によって違います。この豆知識では、それらの違いについて、わかりやすく解説していきます。

 


「横揺れ 縦揺れ」の原因

建物の中で感じる揺れの原因は、いくつか種類があります。これに関しては、こちらの豆知識「振動の原因-まるわかりガイド」をご参照ください。

図1に振動源と、それにより建物に発生する揺れの方向の関係を示します。
横揺れは、強風や遠くで発生した地震の揺れ(長周期地震動)、車・鉄道などの交通振動、工場の生産機械の稼働がよく原因になります。
一方、縦揺れは、歩行や飛び跳ね・ダンスなどの人の動きや、車・鉄道などの交通振動、工場の生産機械の稼働、建物内部の設備機器の稼働がよく原因になります。特に、交通振動や工場生産機械の稼働は、横揺れ・縦揺れの原因となりますが、実際は縦揺れで問題となるケースが多いです。

 

図1 振動源と建物に発生する振動方向の関係

「横揺れ 縦揺れ」による建物の揺れ方の違い

建物に伝わる振動は揺れの方向によって、建物に異なる影響を与えます。図2に建物の揺れ方(横揺れ 縦揺れ)を示します。
横揺れは、建物全体と共振して、建物を横方向に揺らします。対して縦揺れは、建物の梁や床と共振して、床を縦方向に揺らします。
例えば、横揺れは建物の全体を揺らすので、同じ階であれば、揺れの大きさは場所によってあまり変わりません。縦揺れは局所的なので、同じ室内でも揺れている場所とあまり揺れない場所があります。

  

図2 建屋の揺れ方(横揺れと縦揺れ)

「横揺れ 縦揺れ」の発生頻度

次に、横揺れ 縦揺れの発生頻度についてお話しします。横揺れの原因となる強風や遠くで発生した地震の揺れは、多くても年数回程度と頻度は低いですが、強風においては数時間から半日以上続く場合もあります。
一方で、縦揺れは、人間の活動、交通、設備機器、工場が原因のため、毎日何度も発生します。
なお、交通振動や工場振動は主として縦揺れになることが大半で、横揺れが発生することはまれです。

 

図3 振動の発生頻度

揺れる方向による人の感じやすさの違い

揺れる方向によって、感じ方も変わります。感じ方の違いについては、横揺れ(水平振動)縦揺れ(鉛直振動)の感じやすさが基準レスポンスにより数値化されています。

図4は周波数に対する横揺れと縦揺れの基準レスポンスのグラフです。横軸が周波数、縦軸が揺れの感じやすさを表します。周波数によって揺れの感じやすさが違う人間の体感特性を表したもので、緑色が横揺れ、青色が縦揺れを示しています。

  • 横揺れは1~2Hzで最も感じやすい
  • 縦揺れは4~8Hzで最も感じやすい
  • 3Hz付近を境目に、それより低い周波数では横揺れの方が感じやすく、それより高い周波数では縦揺れの方が感じやすい

図4 鉛直特性・水平特性の基準レスポンス

参考文献

日本建築学会:居住性能評価のための環境振動設計の手引き 2020.6