振動対策の技術の1つとして、制振技術という言葉を聞いたことがあるかもしれません。制振に対する一般的な印象として、「よくわからない」や「難しそう」という声をよく耳にします。今回から3回にわたって、制振についてわかりやすく説明いたします。本稿では、特に地震対策としての制振技術、すなわち「制震」について解説します。
● 制振(震)とは何か?
制振(制震)とは、主に建築物やその他の構造物の振動(揺れ)を軽減する技術です。振動や地震のエネルギーを吸収することで、揺れを速やかに低減させます。この技術は、様々な場面で発生する振動対策のために使用されます。問題となる振動が地震の場合、制震と表現します。
● 制震の仕組み
制震技術は主に「制震デバイス」と呼ばれる装置を使用して実現されます。これらのデバイスを構造物に取り付けることで、構造物の揺れを吸収して振動を小さくします。
● 制震デバイスのタイプ
地震時のビルの揺れを抑えるための制震デバイスをタイプ毎に説明します。

図1 建物内の制震デバイス
制震デバイスの例①:制震ダンパー
地震対策と聞くとビルに入っている下の写真のような部材を思い浮かべる人も多いかもしれません。

図2 制震ブレース一例
これは、制震ブレースと呼ばれており、ダンパー部材が変形、伸縮することで振動のエネルギーを熱などに変換し、地震の揺れを吸収する働きがあります。制震ダンパーは、主にゴム系、オイル系、金属系の材料がよく使われます。
制震デバイスの例②:マスダンパー
①の制震ダンパーと別タイプの制震デバイスとして動マスダンパー(動吸振器とも言います)と呼ばれるものがあります。マスダンパーは、図3のように対象構造物屋上へ取り付けたマスダンパーの錘(おもり)が構造物の水平の揺れに対し、逆方向を動くことで、構造物の振動を打ち消し、低減させる効果が得られるものです。
構造物の固有振動数と錘(Mass)の固有振動数を調整(Tuned)させることで、錘を動かすタイプのマスダンパーを、Tuned Mass Damper(TMD)といいます。一方モーターなどの動力で錘を動かすタイプのマスダンパーをActive Mass Damper(AMD)といいます。

図3 マスダンパのイメージ
弊社では地震対策用のTMDの導入実績があります。地震による建物の揺れを低減させるため、錘も100 tと非常に大型になっています。
地震からビルを守ります。~100tonクラスのTMD事例~

図4 地震対策用TMD一例
対策事例をこちらでご紹介しております。
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