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制振入門 (1):制震と制震デバイスとは -まるわかりガイド

振動対策の技術の1つとして、制振技術という言葉を聞いたことがあるかもしれません。制振に対する一般的な印象として、「よくわからない」や「難しそう」という声をよく耳にします。今回から3回にわたって、制振についてわかりやすく説明いたします。本稿では、特に地震対策としての制振技術、すなわち「制震」について解説します。

制振(震)とは何か?


制振(制震)とは、主に建築物やその他の構造物の振動(揺れ)を軽減する技術です。振動や地震のエネルギーを吸収することで、揺れを速やかに低減させます。この技術は、様々な場面で発生する振動対策のために使用されます。一般的には、問題となる振動が地震の場合、制震と表現します。

制震の仕組み


制震技術は主に「制震デバイス」と呼ばれる装置を使用して実現されます。これらのデバイスを構造物に取り付けることで、構造物の揺れを吸収して振動を小さくします。

制震デバイスのタイプ


地震時のビルの揺れを抑えるための制震デバイスをタイプ毎に説明します。

図1 建物内の制震デバイス

制震デバイスの例①:制震ダンパー

地震対策と聞くとビルに入っている下の写真のような部材を思い浮かべる人も多いかもしれません。

図2 制震ブレース一例

これは、制震ブレースと呼ばれており、ダンパー部材が変形、伸縮することで振動のエネルギーを熱などに変換し、地震の揺れを吸収する働きがあります。制震ダンパーは、主にゴム系、オイル系、金属系の材料がよく使われます。

制震デバイスの例②:マスダンパー

①の制震ダンパーと別タイプの制震デバイスとしてマスダンパー(動吸振器とも言います)と呼ばれるものがあります。マスダンパーは、図3のように対象構造物屋上へ取り付けたマスダンパーのおもりが構造物の水平の揺れに対し、逆方向に動くことで、構造物の振動を打ち消し、低減させる効果が得られるものです。


構造物の固有振動数とおもり(Mass)の固有振動数を調整(Tuned)させることで、おもりを動かすタイプのマスダンパーを、Tuned Mass Damper(TMD)といいます。
一方、モーターなどの動力で錘を動かすタイプのマスダンパーをActive Mass Damper(AMD)といいます。

図3 マスダンパのイメージ

弊社では地震対策用のTMDの導入実績があります。地震による建物の揺れを低減させるため、おもりも100 tonと非常に大型になっています。
地震からビルを守ります。~100tonクラスのTMD事例~

図4 地震対策用TMD一例

対策事例紹介

どんなところで?どんな揺れ?揺れの原因揺れによる問題
建物全体の横揺れ(水平振動)


地震時ビル用制振の事例
オフィスの風揺れ制振の事例
ホテルの風揺れ制振の事例
・地震
・強風 など
建物倒壊・破損、内部家具転倒など
揺れによる不安、不快感
建物内の床揺れ(上下振動)
 オフィス、住居、工場など

オフィスの振動環境改善の事例①
オフィスの振動環境改善の事例②
オフィスの振動環境改善の事例③
工場の作業環境改善の事例
フィットネス・タテノリ振動の対策事例
・交通振動
・歩行振動
・フィットネス
・設備機械 など

不快感による居住性、作業性の低下
振動による精密機器などの不具合
ブリッジ構造物(上下振動)
 階段、歩道橋、連絡通路、渡り廊下など


階段の振動環境改善の事例
渡り廊下の歩行振動対策の事例
・歩行振動 など不快感、通行時に歩きづらい