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環境振動の影響とその対策 – まるわかりガイド

 我々が生活している建物や周辺環境では、人が感じられない領域まで含めると常時振動が発生しており、そのような振動のことを環境振動と呼びます。 今回は、この環境振動の影響と対策についてわかりやすく説明していきます。

環境振動とは?

 日本建築学会では、環境振動という用語を以下のように定義しています。「環境振動とは、地盤、建物などある広がりをもってわれわれを取り巻く境界の日常的な振動状態をいうものとする。したがって、特定の振動源単体や大地震などは除かれるが、広義には含めてもよい。」つまり、日常生活で感じる様々な振動の内、特に居住環境に影響を及ぼす振動を環境振動と考えることができます。

例えば、以下のような振動が環境振動に含まれます。

  • 道路を走る車両や鉄道による交通振動
  • 建設工事による振動
  • 工場の生産機械による振動
  • 風や長周期地震動による建物のゆれ
  • 設備機器による振動
  • スタジアムやコンサート会場でのたてのり振動など
  • 建物内部での歩行振動
  • 階段昇降時の振動  等々

環境振動の振動源

環境振動の振動源は、以下のように分類できます。


 図1に示すように、環境振動の振動源は大きく外部振動源と内部振動源に分けられます。さらに外部振動源に関しては、人の活動に由来する人工振動源と自然振動源があります。詳しい内容については振動の原因-まるわかりガイドを参照ください。


図2は、様々な振動源の具体的な例の一部を示しています。

環境振動の揺れの方向

環境振動の揺れ方には、主に以下の2つの方向があります。

  • 鉛直(上下)方向:主に建物の床の振動
  • 水平方向:建物全体の揺れ

図3は、鉛直方向と水平方向の振動の違いをイメージとして示しています。

図4に示すように、振動源によって主に影響を与える振動の方向が異なります。
詳しい内容については建物の「水平振動」と「鉛直振動」の違い-まるわかりガイドを参照ください。

環境振動の影響

 環境振動は、地震のように構造物に大きなダメージをもたらすような大きな振動は含まれませんが、繰り返されることにより人体や機器に影響を及ぼすとされています。ここではどのような影響を及ぼすか説明します。
人体への影響
1. 心理的影響:
  不快感や不安感
2. 生理的影響:
  循環器、呼吸器、消化器への影響
  自律神経のバランスの乱れ
  不眠や抑うつ状態
  乗り物酔いのような症状

これらが原因により、生活の質の低下や作業効率と生産性の低下を引き起こす可能性があります。

さらに、環境振動は機械にも影響を及ぼします。

機器への影響
1. 物理的影響:
  生産品の不良率の増加
 
 以上のように、環境振動は人体と機械の両方に悪影響を及ぼし、健康面や経済面でさまざまな課題を引き起こす可能性があるため、適切な対策が必要不可欠です。

環境振動対策

環境振動の影響を防ぐ方法として、各状況に合わせて様々な対策方法が考えられます。今回は、実際に行った対策事例を以下に示します。

どんなところで? どんな揺れ?揺れの原因揺れによる問題
建物全体の横揺れ(水平振動)

強風によるオフィスビルの環境振動改善の事例
強風によるホテルの環境振動改善の事例
強風による商業ビルの環境振動改善の事例
強風交通振動など揺れによる不安、不快感
建物内の床揺れ(上下振動)
オフィス、住居、工場など

生産機器による工場の環境振動改善の事例
ポンプによる工場の環境振動改善の事例
道路交通振動によるオフィスの環境振動改善の事例(1)
道路交通振動によるオフィスの環境振動改善の事例(2)
道路交通振動によるオフィスの環境振動改善の事例(3)

鉄道振動によるオフィスの環境振動改善の事例
隣接工場棟、生産機器によるオフィスの環境振動改善の事例

歩行振動によるオフィスの環境振動改善の事例(1)
鉄道振動によるオフィスの環境振動改善の事例(2)
歩行振動によるオフィスの環境振動改善の事例(3)
歩行振動によるオフィスの環境振動改善の事例(4)
歩行振動によるオフィスの環境振動改善の事例(5)
道路交通振動による住宅の環境振動改善の事例
タテノリによる劇場の環境振動の対策事例
フィットネス振動によるスポーツジムの環境振動の対策事例
設備機械交通振動歩行振動フィットネスなど不快感による居住性作業性の低下
振動により精密機器などに不具合発生
ブリッジ構造物(上下振動)
階段、歩道橋、連絡通路、渡り廊下など

階段の振動環境改善の事例(1)
階段の振動環境改善の事例(2)
階段の振動環境改善の事例(3)

渡り廊下の振動環境改善の事例
歩行振動など不快感
通行時歩きにくい

快適な生活環境を維持するためには、適切な対策が不可欠です。個々の状況に合わせた最適な解決策を実行することが重要です。

参考文献 後藤・濱本著:わかりやすい環境振動の知識