「短工期だから」で終わらせない推進工事の防音ハウス設計・施工事例

ACHIEVEMENTS 「短工期だから」で終わらせない推進工事の防音ハウス設計・施工事例

防音設備

推進工事は数ヶ月、場合によっては数週間といった短工期のため、周辺への騒音影響評価や防音対策が省略されがちな現状があります。
しかし、泥水式・土圧式推進工法において、プラントや発電機から発生する機械騒音の影響は工事期間の長短に関わらず同じです。
本記事では、「短期間だから」と対策を妥協せず、事前の騒音予測検討から現場に最適化した防音ハウスの設計・施工を行った具体的な事例をご紹介します。

  

推進工事における防音対策の課題|工期の短さが招くリスク

推進工事における防音対策を難しくしている最大の要因は、「数ヶ月、場合によっては数週間」という工事期間(工期)の短さにあります。

一般的に大規模な仮設構造物は、構築や解体に一定の時間と相応のコストを要します。そのため、「掘進期間の短さ」に対して仮設工事の負担が大きくなりすぎ、計画段階において周辺への騒音影響評価(シミュレーション)自体が省略され、簡易的な防音シート養生のみで済まされてしまうようなケースも少なくありません。

しかし、工事期間がどれほど短かろうと、泥水プラントや土圧式設備、大型発電機などの発音源から発生する騒音が周辺住民に与える影響は同じです。「期間が短いから」という理由は、音漏れによる環境への影響を容認する理由にはなりません。

簡易対策のまま着工すれば、環境基準値(45dB〜50dB以下)を大幅に超過し、夜間施工の停止やそれに伴う大幅な工期遅延が発生するリスクを常に孕むことになります。短工期の現場であっても、着工前に周辺環境への影響を的確に予測し、工期と遮音性能を両立できる最適な防音対策を計画することが不可欠です。

  

対策の検討経緯(ヤクモへのご相談から対策提案までの流れ)

本案件の施工計画段階において、ヤクモへ騒音検討のご相談をいただきました。

お問い合わせから対策提案に至るまでは、以下の流れで検討を進めています。

  

  • 1. 騒音シミュレーションの実施
    施工計画図面と使用機材のデータに基づき、泥濃推進プラントや発電機などの音圧レベルを計算。対策を講じない場合の敷地境界における騒音影響のシミュレーションを行います。
      
  • 2. 防音ハウスのグレード決定
    シミュレーションによる評価結果をもとに、目標とする減音量(dB)を満たす最適な防音ハウスのグレード(遮音・吸音性能)を選定します。
      
  • 3. ヤードに合わせた形状設計の検討・提案
    決定したグレードに基づき、限られたヤード内の機材配置やクレーンの旋回半径を検証。作業性を損なわずにスペースへ収まるハウスの形状を図面段階で設計し、ご提案いたします。 
      

騒音シミュレーション結果|対策目標値と音響計算結果の比較

事前の施工計画段階において実施した、各受音点(周辺への影響評価ポイント)における騒音レベルの予測計算(シミュレーション)結果は以下の通りです。

  

■ 予測計算結果一覧(騒音レベル単位:dB)

  

騒音対策案P-1
高さ4.5m
準工業地域
P-2
高さ4.5m
準工業地域
P-3
高さ28.5m
準工業地域
P-4
高さ4.5m
第一種住居地域
対策目標値55555545
騒音対策が無い場合77806468
防音ハウス
BSK-Aタイプ
53574445
防音ハウス
BSK-Bタイプ
49534040
防音ハウス
BSK-Cタイプ
42463333

  

※青文字は目標値以下を満足
※P-3の受音点高さ(28.5m)は、近隣の高層構造物(マンション等)への影響を考慮して設定しています。
※P-1〜P-3の周辺は準工業地域、P-4は第一種住居地域に属するため、それぞれの土地利用に合わせた環境基準値(目標値)を設定しています。

  

【騒音予測コンター図】

騒音対策がない場合の騒音レベル
〈騒音対策が無い場合〉
防音ハウス(BSK-Bタイプ)で騒音対策をした場合の騒音レベル
〈防音ハウス対策(BSK-Bタイプ)〉

  

騒音対策方法の決定と防音ハウスの仕様

上記の音響計算結果から、対策を講じない場合はすべての受音点で目標値を大幅に超過することが判明しました。また、最も高い遮音性能を持つ「BSK-Cタイプ」であれば目標値を大きく下回るものの、数ヶ月から数週間という短工期の現場において、過剰な仕様の仮設物を構築することは工程およびコストの適正化の観点から大きな負担となります。

これらのシミュレーション結果を総合的に評価し、本工事の泥濃推進工事において、工期への影響を最小限に抑えつつ必要な遮音性能を満たす仮設防音ハウスとして、ユニット式防音ハウス ハーモニーパネル(BSK-Bタイプ)を選定・施工しました。

 

「ハーモニーパネル(BSK-Bタイプ)」の選定理由

短工期の推進工事において大がかりな鉄骨造+防音パネル(屋根、壁)を施工することは、工程やコストの面から大きな負担となります。

本製品は柱鉄骨と防音パネルが一体となった構造を特長としており、補強ブレース(筋交い)が不要です。これにより部材点数と現地での組立工程を最小限に抑えることができるため、短期間の掘進スケジュールを圧迫しない点から最適なタイプとして選定しました。

  

主要な仕様と特長

高い施工性と工期短縮:柱鉄骨一体型パネルをクレーンで吊り上げ、順次ジョイントしていくユニット式構造により、現場での急速施工を可能にしています。
 

泥濃推進の音源対策に適した遮音・吸音性能:ハウスの壁面・天井面を構成するパネルは、外部への遮音性能だけでなく内部の反響を抑える吸音材が内包されており、プラント設備や各種ポンプから発生する騒音を効果的に遮断します。
 

形状レイアウトの自由度:平面方向・高さ方向にパネルをフレキシブルに組み合わせられるため、現場ごとの敷地制約や機材配置に合わせた柔軟な形状設計が可能です。

  

プラント配置図
配置図

  

施工写真
施工写真

  

施工結果|全受音点で目標騒音レベルを達成

本グレード(BSK-Bタイプ)の防音ハウスを導入した結果、第一種住居地域(特に厳しい基準が課される地域)に属するP-4(目標45dB)を含め、準工業地域・第一種住居地域のすべての受音点において目標騒音レベルをクリアすることができました。

これにより、「短工期に対応する急速施工性」と「周辺環境への確実な配慮」を両立し、掘進スケジュールに影響を与えることなく無事に工事を完了させています。

  

まとめ|短工期の推進工事こそ事前の騒音予測がカギ

推進工事において、工事期間の短さを理由に防音対策を簡略化するのではなく、現場の工期やヤードの条件に応じた「急速施工型」の防音ハウスを選定することは、確実な工程管理を行う上で非常に有効な手段です。

ヤクモでは、今回の事例のように、事前の騒音影響評価(シミュレーション)に基づいた最適なハウスグレードの選定、限られた作業スペースに合わせた形状設計、出来形に沿った柔軟な構築、そして現場でのスピーディーな施工まで、すべてワンストップで対応可能です。

「自社に騒音検討のノウハウがない」「限られたヤードにどう防音ハウスを配置すべきか分からない」といった課題をお持ちの施工管理者・発注者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。