AMD vs TMD 徹底比較

 近年、建築内において、様々な振動源(交通振動、フィットネス・歩行振動、設備機械振動etc)が原因の床揺れで、居住性や作業環境が悪化し問題となるケースが増えております。ヤクモではこれらを改善するための対策としてAMD(Active-Mass-Damper)やTMD(Tuned-Mass-Damper)をご提案しておりますが、この2つ一体何が違うのでしょう? 特徴は?コストは?メンテは?...以下で比較してみました。


様々な振動源

動作原理と構成部品について

 AMD(=Active Mass Damper)とTMD(=Tuned Mass Damper)は、どちらもマスダンパーといわれる制振デバイスで、振動を抑えたい対象(ここでは建物の床)に取り付けた錘の揺れによる反力で、対象物の振動を抑制する働きがあります。このうちTMDは錘・バネを床の固有振動数と同調(Tuned)させることによって、AMDはモータなどの動力で錘を(activeに)動かし振動を吸収するための反力を制御することによって、床の共振域の振動を吸収します。力学的なモデルと装置のハードウエア構成を比較すると下のようになります。




特徴・コスト・メンテナンスについて

AMDとTMD 比較一覧表
比較項目 AMD TMD
① 床の振動低減効果はどのくらい違うの?どんな違いがあるの?
→詳しく
小さな質量で大きな効果を発揮します(設置スペース小)。
床の複数の振動モードに対して1台で効果を発揮します。
基本的に可動マスの大小で効果が決定されます。
1つのモードに対して1台ずつ必要になります。
② 積載荷重が変わり、床の固有振動数が変化してしまった場合どうなるの?
→詳しく
ソフトウェアのパラメータ調整で比較的容易に対応可能です。 バネ・マスを再度床の固有振動数に合わせるメカ的なチューニングが必要です。
③ コストはどのくらい違うの?
→詳しく
同じマス質量で比較すると、アクチュエータ、センサ、コントローラが必要なAMDの方が高コストとなりますが、その分、AMDは小さな質量・少ない台数で効果が得られます。参考までに、可動マスと効果の関係をまとめて比較してみました。
④ メンテナンスは必要? 定期的なメンテナンスを推奨します。
一部電気部品については一定期間での交換を推奨します。
ノーメンテでOKです。

①床の振動低減効果はどのくらい違うの? どんな違いがあるの?

 同程度のAMDとTMD、どのくらい効果に差があるのかを比較実験した結果です。

 下図は、RC造のとある事務所床(柱間約9.8m×4.5mスパン)にて起振器を用いて5Hz~20Hzのサインスィープ加振した時の床の振動加速度スペクトルのデータで、制振なし、TMDを設置した場合、AMDを設置した場合が重ねてあり、それぞれの振動低減効果が比較できます。※TMDは40kg、AMDは50kg、とほぼ同じ可動マス条件での比較となります。

 11.9Hz、17.1Hz、19.1Hzと3つの固有振動モードがありスペクトルが卓越していますが、TMDの場合チューニングした1次モードにのみ2~3dBの効果が表れています。一方AMDは、1次~3次モードすべてを低減させており効果量もTMDよりはるかに大きく1次モードでは10dB以上、2-3次も5dB程度効果が得られています。

 このようにほぼ同じ可動マスで比較すると、AMDの効果がはるかに大きく、複数モードに対して効果を発揮することがわかります。


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②積載荷重が変わり、床の固有振動数が変化してしまった場合どうなるの?

 用途変更や設備増設で積載荷重が変わり、床の固有振動数が変化することはよくあります。

 ここでは、そのような床の固有振動数変化に対してAMDを追従させた例をご紹介します。 某工場では、生産設備振動が原因の作業環境改善のためのAMDの導入後、新たに生産設備ラインを増設したため、床の固有振動数が7.5Hz→6.5Hzとかなり低く変化してしまいました。そこで、これに追従し効果を発揮し続けられるようソフトウエアのパラメータ調整を実施した結果が下図です。

 こういった場合、TMDはチューニングから外れて効果がほとんどなくなってしまうのでバネ交換など手間のかかる作業が発生してしまうところですが、AMDの場合は制御盤にPCをつなげての作業(数時間程度)で済みます。


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③コストはどのくらい違うの?

 下図に可動マスと効果≒(制振力=AMD・TMDの反力)の関係をまとめて比較してみました。同じ効果(制振するための力)を得ようとすると、AMDの方がTMDよりはるかに小さなマスで済むことがわかります。また、この度、工場の生産設備向けに開発したACサーボ&ボールねじタイプアクチュエータを搭載した(NEW)YAMD-0600は、リニアモータを搭載した従来品のAMDよりも更に大幅な大推力・コンパクト化を実現しています。

 コストについては、同じマス質量で比較すると、アクチュエータ、センサ、コントローラが必要なAMDの方が高くなりますが、その分、AMDは小さな質量・少ない台数で効果が得られますので、実際に必要な台数を検討してみて(AMDだと○kg×△台、TMDだったら●kg×□台)、として比較することが必要です。実際にどのくらいのAMD、TMDが必要になるのかは、床面積だけでなく、対象とする振動源がどのくらいの加振力なのか、発生している床振動をどの程度抑える必要があるか、によって変わってきます。ヤクモでは、測定やシミュレーションによって、AMD、TMDの仕様検討や環境振動設計に関するコンサルティングも可能です。




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ショールームにてAMDと超薄型制振装置(TMD)を展示

東京オフィス地下のショールームにて、電力を利用して振動を制御する制振装置(AMD)の「アクティブ・マス・ダンパー(YAMD-0050)」と、OA床下などの狭小スペースに置くだけで振動を低減させることが可能な超薄型制振装置(TMD)の「フロアメイト(FM-30)」を展示していますので、その振動低減効果を体感していただけます。
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